しかし、横断歩道はどんなに見渡しても存在しない。
ふと、よく見ると、駅から反対側に歩いた方向に、歩道橋の姿が見えるではないか!
なるほど、歩道橋を渡れば、楽々向こう岸へ渡る事が出来るというわけだ。
解決策を見つける事が出来た、マウスキーと姉マウスキーは、意気揚々と歩道橋へと歩いた。
そして、気づいた事がある。
割と、歩道橋までの距離が長い、という事である。
歩道橋を渡った後、割と長い距離を後戻りして、駅の方向へと再び歩かなければならないのだ。
その時点で心が挫けそうになったが、hatao先生の元へ、告げている定刻通りに何とか意地でも到着しなければならない使命が我々にはあった。
とにかく、気持ちやモチベイションを奮い立たせながら、マウスキーと姉マウスキーは歩道橋を渡った後、駅の方向へと歩き出した。
平和に歩き出して数分後、更なる難関にぶつかってしまった。
なんと、歩道が消えたのである。
目の前に広がるのは、車専用の道路だけだった。
歩行者、自転車用の、ちょこっと白線で区切っている線も存在しなかった。
はっきりと、看板に「歩行者はここまで。別の道に迂回しろ」と書いてあったから、確実である。
迂回すれば、駅から相当遠くなってしまう…
マウスキーは完全にポッキリと心がへし折れてしまった。
もう、徒歩で駅に行く事は適わない、我々に残された道は後戻りをして、お金がかかってもタクシーを呼んでもらう事しかない。
その瞬間の事だった。
姉マウスキーが猛烈な勢いで迂回の脇道を通り抜けると、「歩行者禁止」の看板も無視して、道路に走り出たのである。
嘘だろ!!!!
マウスキーの体は完全に硬直してもおかしくないぐらい、驚いてしまった。
そして、明らかに、看板の向こう側に行った姉マウスキーは「こっちに早く来い」のジェスチャーをマウスキーに向かってしている。
ついて行ったら死ぬんじゃないだろうか?と、心細くなりながら、とりあえず、ついて行ってみる事にした。
そして、数秒後、ついて行くんじゃなかった、と、マウスキーは後悔した。
本当に、歩行者が歩くスペースなどミジンコもないのだ。
だが、姉マウスキーは「大丈夫だと思う」と断固言い通した。
しかしながら、命と怪我のリスクが高い事となると、マウスキーの方が頑固一徹である。絶対に後戻りすると主張を通したのだ。
姉マウスキーは、仕方なく譲歩してくれた。
そして、仕方なく安全な迂回路を選んだマウスキー達は、再び、歩道橋に向かって歩きはじめた。
と、その時である。
それは、風だったのかな?と思うほどの勢いで、自転車に乗った男がマウスキー達の横を通り過ぎて行った。
自転車は、歩行者禁止の、あの車専用の道路に突っ込んで行き、狂ったように自転車を漕ぎ漕ぎして、あっという間に見えなくなってしまったのであった。
その姿を見送ったマウスキーと姉マウスキーは、安全な迂回路を選んだ事を本当に誇りに思った。
あの狂ったように疾走する自転車男と、同レベルの人間にならなくて済んだからだ。
「hatao先生のところへ、大事なレッスンを受ける日に、わざわざ命知らずな事をする必要ない。わが身を大事にしなければ、レッスンなんか受けられない!」
狂ったように自転車を漕いで行ってくれた男がいたお陰で、マウスキーは、単に自動車道にビビっただけの心根に大義名分を得る事が出来たのであった。
そして、同じ場所を行ったり、来たりして大事な時間を30分ほどロスしてしまったマウスキー達は、やっとの事でローソンにたどり着き、タクシーを呼んでもらう事に成功した。
そして、hatao先生のお宅がある町まで、安全にタクシーで運んでもらえたのだった。
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