2016年3月16日水曜日

白鳥の湖で思い出したこと。

最近、母マウスキーが熊川さんの「白鳥の湖」を観ていた。

ストーリー的に原作に忠実だからマウスキーは結構好きだ。

テレビで前に観た、どこだかのバレエ団の「白鳥の湖」では、「二人の強い愛のパワーで、悪党ロットバルトに打ち勝ちました」みたいな演出があった。それを見た時は、死ぬほどうんざりしたものだ。

演出家は、作品を根本から捻じ曲げるほど力があるものなのだろうか?
よく事情は知らないけど、酷い演出ほどマウスキーの心を傷つけるものはないと感じる。

そして、そんな日ごろのマウスキーの心のモヤモヤを明確な怒りにしてくれた映画がある。

その映画とは、「ブラックスワン」だ。

ここで、母マウスキーが「白鳥の湖」を見ていたという事が伏線であった事がご理解いただけただろう。

マウスキーが話したかったのは、「ブラックスワン」を観た時に湧き起こった怒りの事だったのだ。

ストーリーは、ナタリー・ポートマンがどっかのバレエ団に所属していて、そこで「白鳥の湖」をする事が決まる。
それで、彼女は白鳥の湖の主役に、バレエ団の監督に抜擢される。
しかし、喜びもつかの間。地獄の日々が始まるのだ。

まず、監督が言うには、白鳥と黒鳥を、パーフェクトに演じなければいけない、というものだ。

技術だけじゃ駄目。

白鳥と黒鳥の内面まで、パーフェクトに演じなければ、もう役降ろす、みたいにに言われる。

で、真面目なナタリー・ポートマン(役名忘れた)は、必死に監督の意向に沿うために頑張るのだ。

そうこうしていたら、監督からセクハラを受ける。

拒否すると、「自分の求める黒鳥なら、こんな事なんてことない。君は向いてないんじゃないかな」的なパワハラまでし始めるのだ。

普通の人なら、この時点で法律に訴えてもいい状況なのだが、真面目なナタリー・ポートマンはそんな事しないのだ。自分の手の皮を剝きながらでも、監督のいう、完璧な黒鳥を演じようとする。

ちょっと待て! 途中から何か変わってる?

白鳥の湖って、主人公が白鳥なのに、完璧な黒鳥ってなんですか!?

そう、このストーリーの悲劇はここにある。

この監督は、白鳥はそっちのけで、黒鳥の事ばっかり言うのだ。

ナタリー・ポートマンが白鳥の演技を完璧にすると、「○○さんはさぁ、白鳥はいいんだけど、黒鳥が全然できないよね。だけど、△△さんは、黒鳥が完璧なんだよ。どうして△△さんみたいに踊れないの?」と、小言を言うのだ!

だったら、最初から一人二役じゃなくて、二人一役にしとけ!! と、怒りを感じる。

だが、そんな妥協はしない。
自分の労力は欠片も出さず、ダンサーを酷使して、完璧な清純な白鳥、妖艶な黒鳥を演じさせ、別人にしか見えないと言われ、話題の人になりたかったのだ。

バレエで!!?

どうせ、観る人は遠目だし、化粧がめちゃくちゃ濃いし、衣装の色が違っただけで別人にしか観えないのに!?

全くもって驚きの連続である。

しかし、ブラック・スワンのヒロインであるナタリー・ポートマンは、こんな事を思わない。

それで、別人にしか見えない白鳥と黒鳥を研究して、研究して、麻薬やら酒にまで手を伸ばす。

結果的に、自分の中に白鳥と黒鳥の人格をそれぞれ作って、最後は役を奪おうとするドッペルゲンガーみたいな相手を殺してしまい、それが自分だったと気づいて本番中に死ぬ、みたいな感じの話だ。

まぁ、この振付師だか監督だかは、「俺は白鳥よりも、ダンゼン黒鳥派」って感じなんだろうなぁ、と思った。

でも、これは、監督だか振付師だかがヘボいからこそ成り立つ映画なんだなとも解釈した。

もし、ちゃんとした人で、「ここはね、音楽がこうだから、こうでしょ」とか、大人として理解できるように指導できる人なら、こんな事にはならなくて、普通に「○○バレエ団《白鳥の湖》の舞台裏」的なドキュメンタリーっぽい映画にしかならないに違いない。

故に、マウスキーは「ブラックスワン」を見終わった後に、「または、振付師がもたらした災厄」と心の中で副題を唱える事にした。


でも、まぁ、いるんじゃないかな、こういう人、ともリアリティを感じた。

ストーリーを捻じ曲げる演出家だっているし。

そこまでするかっていう感じで、自分の力量発揮だって頑張って、新しい解釈を見つけようみたいな人とかも、いるんじゃないかな。

新しい解釈とか、いらないけど・・・

チャイコフスキーとかは特に、オーソドックスな感じ以外の舞台で観たくない・・・・

「ブラックスワン」でチラッと出てきた質素で、太陽が昇る感じのラストシーンも好きじゃないし。

太陽が昇るシーンで終わるのは、「魔笛」と「ライオン・キング」とかでいいし、白鳥の湖では見たくないと切に思う。

幼児のマウスキーでも、「ない」って言うと思う。そもそも、音楽に合ってないんじゃないかな。


でも、「ナタリー・ポートマンも本当にバレエダンサーみたいだったし、サスペンスと白鳥の湖のまさかのドッキングっていう感じだろうし、評価も高いし、良い映画だったのだろうと思う。

あと、何気に、ウィノナ・ライダーの演技がやっぱり滅茶苦茶すごかった!!


ちなみに、ストーリーはどうだったんだろう。

書いた後だけど、wikiとか何とか見て、ストーリーが合ってるか確認はしてみるつもりだ。