はっきり言って、合唱で色々と参加させていただいた事はあるが、これほどまでに仲良く出来なかった合唱団は、かつてないと言っても過言ではない。
やはり、合唱においては協調性が要である。
ちなみに、男声合唱は出番が女声合唱よりも多いため、女性よりも努力していたし、きちんとしていた。
女声合唱は何をしていたかと言うと、本番なんかはメイクの話やらで話題がもちきり。
「ずっと聴いてるから、覚えちゃいますよねー」
とか、遠足気分できゃほきゃほ騒いでいる始末だ。
こいつら、大丈夫なんだろうか。
そんな不安の中、問題の序盤のゾンビシーンに突入。
特になんという問題もなく、モゴモゴ動き、すみやかに合唱団は退場する事に成功した。
こんな事は、動きを守り、いきなり飛び上がったり、スキップしだしたり、変な事さえしなければ、何も問題ないはずなのだ。
動きじゃない。
歌である。
男性は女性よりも先に出番があるので、合唱団が全員そろっての出番は、一幕最後の辺りとなるので、ゾンビが終了した後は控室で長い時間待機していなければならなかった。
どんな場所で出番となるかと言うと、パパゲーノがパミーナ姫を救出して逃げ出そうとしている時に、大勢が偉い坊さんを褒め讃えながら、ジャストその場にやって来るというシーンである。
そう、坊さんを褒め讃えながら登場する役目こそが、我ら合唱団にあったのだ。
何でもそうなのだが、偉い人というのは最後に登場するので、下々の人間は先に待機して「やっほやっほー」と出迎えなければならないものである。
合唱団が待機するタイミングは、パパゲーノがパミーナ姫を連れ出そうとしていたところを見つかって、「こいつは大ピンチ!」とか言っているあたりである。
その場所から待機をして、危機を脱してパミーナ姫たちが「良かったね」と無事を喜んでいた時、まさに狙ったかのように我ら合唱団が、「坊さんバンザーイ」と歌いながらやって来る、そんな感じだ。
そんな事を考えていると、微妙に待機中は長いけど、気を抜く事が出来ないなぁとマウスキー達は考えていた。
しかし、楽屋の雰囲気は我らとは違ったようで、何の話をしているかは知らないが、とにかくみんな修学旅行にやって来た女子のように大はしゃぎしていたのである。
そして、時間が微妙なので落ち着かないマウスキー達は早めだけど、用意して控室を出ておく事にした。
一緒に合唱団に参加していた、Zさんは、「舞台裏でちょっと見てきたい」と言い、舞台裏へと移動。
これが、今後の運命を大きく左右する行動だとは、誰も気づきはしなかった。
大人なら、リハやゲネで言われている事はきちんと守るものだし、こんな本番の大事な時なら、なおさら責任を持って動くはずだと思うものだ。
そう、未だにキーボードを打つ手が震えるほどの恐怖、それはその直後に訪れた。
合唱団の出番間近になり、マウスキー達は言われていた通りに舞台裏に待機した。
そして、その場を目撃した途端に、一瞬で頭が真っ白となった。
なんと、その時、舞台裏にいたのは、男声合唱の人たちと、マウスキー姉妹と、友人のZさんと、もう一人の友人Sさんだけだった。
女性合唱の面々は、我ら4人以外にはいなかったのである──。
0 件のコメント:
コメントを投稿