2018年10月12日金曜日

PLATFORM・14 ~ 花嫁募集中のHさん

Hさんは、Nさんの古くからの友人だという事だった。

最初に会った時の印象は、「すごく、うっとおしい」というものだった。

彼がコーヒーをどうやって飲んでいたかという事は、今も記憶していない。

何故、こんなにうっとおしいと思わせたのか、そこのところを紹介していこう。

彼は、頑張って若作りしている、70代が近いと思われるお爺さんだった。しかし、彼は独身で、婚期を諦めていないと主張していた。

そして、ほどほどに若い女の人と会話をして、ちやほやして欲しいという願望もあるらしいHさんは、あろう事に、PLATFORMをスナックか何かと勘違いしてしまったのだろう。

コーヒー一杯を飲みに来たと言い、自分の話をペラペラと喋った挙句に、マウスキーとMさんが話している事に顔と口を突っ込んできて、「うん、うん」と相槌を打ってくるのであった。

マウスキーはとっても可愛い犬一匹と猫二匹を飼っているのだが、その三匹の話題をしていた時である。
やはりHさんは、「うん、うん」と相槌を打ちながら、「どうせだったら、僕のお世話をして可愛がってくれんかナ?」と、顔と口を突っ込んできた。
「犬や猫はいいから、僕のお世話してー」とかも言ってきたと思う。

そこで、マウスキーは、「私が世話をするなら、まず観察日記をつける所からします。一日何回排泄をして、その便は如何なるものだったのか等も記入します。腸内細菌のバランスを崩しているようだ、今日の便の調子は良好、などと全部手帳に書く事でしょう。体調管理に便は大事ですからね。こうした記録はブログにも書いて世間に公表します」と、丁寧に受け答えていた。

さすがに、Hさんは「…それは嫌だわ」と言い、いったんは引いてくれたかのように思えた。

しかし、Hさんは、マウスキーにモーションをかけたいわけではなく、あくまでも若めの女の人がいるところで、お喋りして、「やだ、Hさんったらー」と、他愛のないお喋りを楽しみたかった人である。

彼の無駄口は、尽きる事を知らなかった。

そして、何かの話題の時に、彼が写真クラブに入っているという話を聞いたマウスキーは、写真なら興味があったので、少しは話し相手になろうとした。

だが、結局駄目だった。

彼は、「僕はね、こんないいカメラを持っていて、こんないいプリンターを持っていて、こんな写真を撮るんだっ」という話を延々とするのだ。
それでいて、他の人の写真は、「こんなの大した事ないわー」と根拠もなくけなすのである。

「凡人」を二足歩行させたかのようなHさんは、完全にマウスキーの中から興味の対象ではなくなった。
話もつまらない、顔もつまらない、注文するものもつまらない、彼の全身からにじみ出ているものと言えば、「僕をかまって」というアピールのみ。



彼がやって来て一番平和だと言えば、元々の彼の友人であるNさんと一緒に働いている時だっただろう。

何故なら、彼の相手は全部Nさんがしてくれるので、絡まれる事はまずなかった。

だが、これほどまで凡庸な人間だからこそ、自分を特別扱いして貰いたがったり、他をけなして自分を持ち上げようとしたり、つまらない事をするのだなと納得はいった。

だが、結局、何をしても「月並み」「平凡」「凡庸」「凡人」「俗物」こうした単語が大変似合うHさんは、時間が経過するにつれ、PLATFORMからは逆に浮いた存在となってしまっていたのであった。

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