問題となったのは、最後のテンポアップで早口になって合唱が入るところがあるのだが、その時に指揮者先生が合唱に合図を出すのをうっかりとしていて、合唱が殆ど落ちてしまったのだ。
アルトは全落ちしていたと言っても過言ではない。
それは、誰の責任になるのだろうか?
合図をしなかった指揮者先生のせいにすれば、それは楽かもしれないが、今まで何か月も練習してきたのだから、少しは分かるはずだ。
暗譜をしていて楽譜を持たない者ならば、ちゃんとカウントを取って入る事だって出来るだろう。
それが出来なければ、楽譜を外す意味がない。
ちなみに、マウスキーはがっつり楽譜を持っていながらも、周囲が歌わないので自信がなくなり、一緒に落ちていたという、誰の事も責められない立場にいた。
そんな時に、指揮者の先生が気が付き、「さっきのところ、僕が合図していませんでしたね。すみません」と、謙虚な言葉を投げて下さったのである。
いいや、カウントを取れなかった方が悪いんだ!と、思ったと同時に、背後から間髪入れずに叫びのおばさんが声を発した。
「ふふふ、やっと分かったのね」──と。
この時は、本当に頭が真っ白になって、それが怒りなのかなんなのか判別できない状態になった。
まぁ、まぁ、怒りよりも、その時は反省の方が先だっていたのかもしれない。
時間が経つにつれ、指揮者の先生は全力で指揮をしておられるため、息切れも起こりはじめた。
指揮者先生があれだけ全力で音楽にぶつかっているという事は、我らも叫びのおばさんなど気にせずに、全力でもっと自分のベストを尽くすべきである。
だが、叫びのおばさんは、どうやら100%余裕だったらしい。
息切れをしている指揮者先生を見て、とても誇らしそうに「ほほほ、私たちの歌声に感動されてるのかしら?」と、コメントしていた。
叫びのおばさんは、誓ってもいいが、一度も歌声を発していない。発しているのはシャウトだけである。
一体、どこからそんな無限に自信が沸き上がるのだろうか?
正直、怒りの限界だった。
この怒りが正に、「歌声が汚い奴は性根も腐っている」と、マウスキーに発言させるほどとなってしまった。
だが、第九に参加する以上は、得たいの知れない自信を振りまきながら、歌わずに叫びつづけるおばさんが後ろに立とうが、歌わなければならない。
もちろん、全力で歌う必要がある。
異を唱えるものは、楽園から出ていけ。by・シラー。
と、いうわけだ。
怒りと苦痛を噛み締めながら挑んだ本番の第九。
ところが、予想もしなかった展開になった──。
お客さんが入った事により、ホールの響きが変わったらしく、叫びのおばさんが、どんなに叫んでも、どうやら聞こえなくなったようだった。
お客様に、叫びのおばさんによる呪縛を解いてもらったのである。
色々と全力を出し切り、本番が終了した時は、信じられないほど疲れ切っていた。
姉マウスキーは、落ち着きを取り戻すと、「叫びのおばさんは、メタルのデスヴォイスに似ていた」と、コメントをしていた。
確かに、デスヴォイスで「フロイデ・シェーネル・ゲッテル・フンケン!」と、ずっと叫ばれたら困るわけだ。
畑が違うのだから、ちゃんとそこにあった歌い方をしてもらわなければ・・・・。
そんな苦労話を、終了後の数か月後に友人のTomokoさんと話す機会があった。
そして、内部の事情に精通しているTomokoさんによると、叫びのおばさん以外にも、楽園をいびつにする存在があったという事実を聴かされたのである。
2017年4月1日土曜日
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