膀胱の限界まであと三十分をカウントし始めたのである。
そんな苦しみの中、やっとの事で我々はテルミニ駅に到着した。
もちろん、テルミニ駅自体には誰も用事があるわけではない。
つまり、マウスキーはTomokoさんと姉マウスキーに、テルミニ駅でトイレに行って来るという事を告げなければならなかった。
突然の告白を聞き、Tomokoさんと姉マウスキーは驚き、「トイレの場所が分かるのか?」と、聞いてきた。
馬鹿にされたものだ、駅にあるトイレぐらいは誰でも案内があれば行ける、マウスキーはそう楽観していた。
そこで、「当然分かる。問題はない」と、いう事を述べ、自信たっぷりに駅へと向かった。
しかし、そう簡単な話ではなかった。
トイレの案内など、駅を見渡してもどこにもない。
夢か幻かと錯覚するほど、トイレは見当たらなかった。
これには参った。
刻々と膀胱の限界がカウントダウンをしながら訪れているというのに、トイレが見当たらないなんて・・・
心ならずも、マウスキーは限界突破した時の惨事について想像しなければならなかった。
いいや、そうなってはならない──今こそ、背水の陣を敷く時だ!
マウスキーは、イタリア人の警備員さん二人組に、「バーニョ(トイレ)・・・バーニョ・・・」と、一生懸命に訴えた。
ところが、この怠け者達は、自分たちのお喋りに夢中で、遥か下界で訴えている観光客の声などは耳にも届いていなかったのである。
何度も、何度も「バーニョ(トイレ)」と言ったのだが、完全無視で彼らはお喋りをしていた。
不幸な結末が頭の中で何度もよぎり、ついにマウスキーは「バーニョ! バーニョ!」と、叫んで彼らの会話を中断させる事に成功した。
すると、傲岸不遜な彼らはチラッと見下ろすと、「トイレ? あっち」と、適当に指差ししてきたのである。
これが、有名なイタリアの指差し案内か!!
いい歳の大人に「トイレ!」と叫ばせた、鬼畜駅員。 |
あっちと言われても分からないが、とにかくそちらの方面に行くしかない。
そちらの方面には、エスカレーターがあり、そこに降りたらトイレがある事が分かった。
これで助かる・・・そう思った矢先である。
テルミニ駅のトイレは、有料だった・・・・・・。
財布のお金と相談し、マウスキーは踵を返してTomokoさんと姉マウスキーの元へと戻った。
「テルミニ駅は有料トイレしかなかったので、三越のトイレを借ります」
Tomokoさんは、「三越まで我慢できるのか?」と、聞いてきたが、マウスキーは自分の力を信じるしかなかった。
「大丈夫・・・三越まで行ける」と、即答した。
膀胱限界まで・・・と、カウントダウンしている間に、何とか三越に到着した。
そうして、最大の悲劇を回避する事が出来たのであった。
完全に膀胱の限界にチャレンジして疲れ切ったマウスキーは、この後はさらに記憶がない。
ホテルに戻った後は、夜になるまで部屋で鋭気を養うだけだ。
マウスキーは、ホテル「キング」の思い出に、ホテルに関する写真を残す事にした。
そして、待つ事数時間・・・。
夜ごはんをジェラードで済ませた我らは、ついにオペラ座へと出陣する事にした。
つづく。
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